タイトル

今中さんの「身近にみられる野鳥図鑑」

王家の食卓

 森林の食物連鎖の頂点に君臨するのはイヌワシです。 だがその食卓は王者にしては食糧事情が厳しく、 餌不足によるペアの消滅や子育ての失敗など王家崩壊の兆しに著しいものがあります。
 イヌワシの主な食べ物はノウサギ、ヤマドリ、キツネ、タヌキやヘビなどが挙げられますが、 なかでも重要なのがウサギです。 林縁部の草地などに出てきたノウサギを上空から急降下して仕留めます。
 この様な狩りを得意とするイヌワシにとって、 狩場として開けた空間が必要欠くべからざる条件といえます。 現在国内の多くの人工林は手入れされることなく放置されています。 その暗く鬱閉した林内はイヌワシの餌動物にとっても餌資源が乏しいため棲みづらく、 同時に狭い空間での狩りを得意としないイヌワシにとって 成長した林木で隙間なく覆われた山は狩場として利用価値が低いものとなっています。
 もう一度本来の多様性に富んだ質の高い森林生態系を取り戻し、世界的にみても貴重なニホンイヌワシが安心して子育てできる環境となってほしいものです。

 イヌワシ    英 Golden Eagle   学 Aquila chrysaelos

イヌワシ
  • ■ 形態  78~95㎝  トビよりはるかに大きい
  • ■ 分類  タカ目タカ科
  • ■ 体色  全身黒褐色で後頸は金茶色 虹彩は黄褐色
  • ■ 鳴き声  ピイッ、ピヨッ、ピョッ、クワッ、クワッなど

ユーラシア、アフリカ北部、北アメリカに広く分布、 日本では留鳥として北海道から九州に分布するが局地的で数少ない。 本稿写真は伊吹山で撮影。
 日本のイヌワシは絶滅の危機にあるが中国ではレストランのメニューに供されているところもある。

イヌワシ2

撮影+解説者紹介:

今中 啓一(いまなか けいいち) ・・ FIO会員

今中さんの写真 少年期、京都東山での様々な小鳥との出会いがきっかけで「鳥大好き人間」となる。以来、現在も日本野鳥の会などにその身をおき、「鳥見」に勤しむ日々が続く。「野鳥を通して野山など多くの自然に親しんでもらえれば・・」との想いで、各地で森林インストラクター活動中。