今中さんの「身近にみられる野鳥図鑑」
名を取り違えた鳥
新緑の頃、毎年のように大阪城公園にやってくる渡り鳥にコマドリがいます。このコマドリの学名に注目
してみましょう。
動植物をはじめとした生き物には学名があります。学名は「二名法」といって大文字で始まる属名と
小文字で始まる種名からなるのが基本です。
江戸時代後期にシーボルトが故国オランダに送った標本で沢山の生物が命名されました。
そのなかでコマドリと日本固有種であるアカヒゲの学名が手違いで取り違え名付けられてしまいましたが、
国際動物命名規約で「一度創設された以上、不適当な理由として後になってから破棄することはできない」
と定められているため、コマドリとアカヒゲは現在も入れ違ったままなのです。
コマドリ 英 Japanese Robin 学 Erithacus akahige
- ■ 形態 14㎝ スズメより小さい
- ■ 分類 スズメ目ツグミ科
- ■ 体色 頭部から上胸は橙赤褐色、背と翼は暗橙褐色で尾は橙赤褐色
下胸は黒く、胸側から脇は灰黒色で腹は白い - ■ 鳴き声 ヒンカラララと駒のいななきに似た囀り
春、夏鳥として渡ってくる。亜高山のささのある針広混交林などで繁殖する。
アカヒゲ 英 Ryukyu Robin 学 Erithacus komadori
- ■ 形態 14㎝ スズメより小さい
- ■ 分類 スズメ目ツグミ科
- ■ 体色 頭部から背翼尾は鮮やかな赤橙色、目先・腮から胸は黒い
- ■ 鳴き声 ヒーヒョロヒョロヒョロと柔らかみのあるふるえる声で鳴く
日本固有繁殖種として3亜種が生息、亜種アカヒゲは屋久島、種子島、男女群島で 亜種ホントウアカヒゲは沖縄本島で亜種ウスアカヒゲは先島諸島で繁殖するとされる。 この鳥に「髭」があるわけでなく薩摩人が「あかひけ」の鳥と言ったのを琉球人が 「あかひげ」と誤読したことから「赤髭」になった。
この鳥たちはとかく誤解から本人が望まないような名になりきっと迷惑に感じているでしょうネ。
撮影+解説者紹介:
今中 啓一(いまなか けいいち) ・・ FIO会員
少年期、京都東山での様々な小鳥との出会いがきっかけで「鳥大好き人間」となる。以来、現在も日本野鳥の会などにその身をおき、「鳥見」に勤しむ日々が続く。「野鳥を通して野山など多くの自然に親しんでもらえれば・・」との想いで、各地で森林インストラクター活動中。