タイトル

土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに紹介していきます。 今回は「クサレダマ」を紹介します。

【№10】クサレダマ(草連玉)
       サクラソウ科オカトラノオ属
       学名 Lysimachia vulgaris var. davurica

  • 日本では、北海道、本州、九州に分布し、 海外では、朝鮮、中国、樺太、シベリア等に分布します。 大阪でも7月頃湿地でみられますが少なくなっています(大阪府絶滅危惧Ⅰ類)。 標高の高い湿地では8月に咲いています。
  • 名前は、「腐れ玉」ではなく、「草レダマ」(草連玉)です。 江戸時代に渡来したヨーロッパに分布しているマメ科の常緑小低木の「レダマ」 (スペイン語で「Retama de olor」)に似て(と言っても、似ているのは花の色だけ?)、 草本性の植物ですから、「草レダマ」と名付けられたそうです。 花の色から別名でイオウソウとも呼ばれます。
  • クサレダマの雄しべの数は、花冠裂片(花弁)の数と同じ5本です。 多くの花では、雄しべと花弁が同数の場合、 お互いに重ならないように、花弁と花弁の間に雄しべが来るように配置されるのですが、 サクラソウ科の花は、5本の雄しべが5裂した花冠裂片(花弁)と対の位置(重なるような配列) にあるのが特徴で、クサレダマの雄しべは筒状に合着していますが、同じ位置関係です。 雄しべが中央の雌しべを取り囲んでいて、花の成熟が進むにつれ、雄しべが次第に広がり、 雌しべが伸びて来ます。 雄しべが先に成熟する雄性先熟の様です。 良く見ると萼片の縁が赤い色の腺体になっていて、これがアクセントになっています。
  • 同じオカトラノオ属で日当たりの良い草原などで見られるオカトラノオ(L.clethroides)や 里山の湿地で見られるヌマトラノオ(L. fortunei)では、 花冠裂片と雄しべの位置関係がよくわかります。 開花時点から雄しべは開いていますが、この角度は成熟すると広がっていくようです。
  • 湿原の夏を彩るクサレダマ、この花が咲くと、高原の秋はもうすぐそこです。

(2012年9月)

写真1:クサレダマ(長野県 入笠湿原)
ゼンテイカ1

写真2 クサレダマ(長野県 入笠湿原:蕾の萼片の縁が赤いのが見える。)
ゼンテイカ2

写真3 オカトラノオ(大阪府岩湧山:花は左から右へ、垂れ下がっている花序の先端へ咲いていく。花弁が4枚の花も見える。)
コミスジ

写真4 ヌマトラノオ(大阪府堺市:花は花序の下から上に咲いていく。) 
コミスジ

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、 花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。 森林インストラクター。