タイトル

土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに、紹介していきます。 今回は「アサギマダラ」を紹介します。

【№1】アサギマダラ   タテハチョウ科 マダラチョウ亜科
              学名 Parantica sita

  • 漢字では「浅葱(浅黄)斑」と書きます。前翅の中央部が薄い水色(浅葱色)で、鱗粉がなく透けて見える美しい蝶です。雄の後翅には黒色の斑紋(性標)があります。
  • 幼虫は、毒性の強いアルカロイドを含む、ガガイモ、ギジョラン、イケマ等のガガイモ科の植物を食べるため、幼虫も成虫も体内にこれらの物質を蓄えています。そのため、天敵の鳥は、この蝶の幼虫や成虫を食べないといわれています。
【アサギマダラの渡り】

アサギマダラは、北海道南部~沖縄までの全国的に分布しますが、越冬できるのは北関東以南です。大阪でも、山地を中心にゆっくりと飛んで花で吸蜜する姿がよく見られます。普通はゆっくり飛んでいますが、驚かすと軽やかに風に乗り、飛翔力は大きいことがわかります。

アサギマダラは長距離移動することが知られています。各地でマーキングしたこの蝶を放し、移動の調査が盛んに行われています。この調査より、世代交代しながら南から北に移動して生息域を広げ、秋に発生したものが東北地方から東海地方、紀伊半島や四国、鹿児島を通って、南の琉球諸島、台湾の方まで「渡り」をすることがわかってきました。調査報告は「アサギマダラを調べる会」等のHPで見ることができます。

本州でも越冬ができ、各地に、アサギマダラの好む食草もありますので、なぜ危険な渡りをするのかは謎とされています。日本の蝶では、イチモンジセセリやウラナミシジミも移動をすることが知られていますが、これほどの長距離移動は報告されていません。また、同じマダラチョウ亜科の北米のオオカバマダラは、何百万頭という規模の驚くべき集団で越冬し、越冬地から北米大陸を南から北へ3500kmを世代を重ねながら行き来することで有名です。なお、アサギマダラでは、このような大越冬地は知られていません。

何故、蝶が渡りをするのでしょう?DNAに組み込まれた本能に基づく行動なのでしょうか?蝶に限らず、昆虫たちの行動の謎は、解明されていないことが多いように思います。

写真1
アサギマダラの雄(黒い性標が見える。:加賀白山にて)
アサギマダラ(雄)白山
写真2
アサギマダラの雌(日光白根山にて)
アサギマダラ(雌)
写真3
3.アサギマダラの食草のガガイモ(堺市内のスーパーの駐車場の生け垣に絡みついていた。卵・幼虫はみつからず。)
ガガイモの花

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。森林インストラクター。