タイトル

土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに紹介していきます。
今回は「フクジュソウ」を紹介します。

【№3】フクジュソウ(福寿草)
        キンボウゲ科 フクジュソウ属
        学名 Adonis ramosa

  • 落葉樹林の下にはえる多年草です。旧暦の正月頃に花を咲かせるということで元日草とも呼ばれます。 実際、標高の低い場所では、2月中旬頃から花が見られ、 春にもっとも早く咲く草本の一種で、いわゆるスプリング・エフェメラルです。 北海道~九州に分布しますが、大阪府では、特別に保護している場所か植物園等でしか見られず、 絶滅危惧Ⅰ類になっています。
  • 従来日本のフクジュソウは1種類と思われていましたが、最近の研究で4種類あることがわかってきました。 北海道に分布するキタミフクジュソウ(A. amurensis)、 本州と九州に分布するミチノクフクジュソウ(A. multiflora)、 四国と九州に分布するシコクフクジュソウ(A. shikokuensis)とフクジュソウ(A. ramosa)です。 産地と萼の長さや色、花びらの数や色、茎が中空かどうかなどで判別可能です。
  • フクジュソウ類に蜜はありませんが、日の当たっているときに開花し、 パラボラ状の黄色い花びらが集熱装置として働いて熱を集め、 その結果、花の中の温度が上がり、花に来た昆虫の体を温め活動を活発にさせて受粉を促進するそうです。 小さなハエ等が花にきているのを見ることがよくあります。
  • 江戸時代より多数の園芸品種も作られている古典園芸植物で、 緋色や花弁が変化した花をつける品種もあります。 代表的な園芸品種であるフクジュカイ(福寿海)は、 ミチノクフクジュソウとフクジュソウの雑種(3倍体)で不念ですが、 花つきがよく育てやすいので、植物園等に植えられているフクジュソウの多くがこの品種の様です。
  • 古くから親しまれてきた、フクジュソウ。今なお新しい発見のある早春の花です。

(2012年1月)

写真1  フクジュソウ:群馬県上野村
アケボノソウ

写真2  園芸品種:フクジュカイ(福寿海)(埼玉県 武藏丘陵森林公園)
アケボノソウの花

写真3 緋色の園芸品種:秩父紅(埼玉県 四阿山)
センブリの花

写真4 撫子咲きの園芸品種:紅撫子(埼玉県 武藏丘陵森林公園)
ムラサキセンブリの花

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、 花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。 森林インストラクター。