タイトル

土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに紹介していきます。 今回は「アケボノソウ」を紹介します。

【№2】アケボノソウ(曙草)
        リンドウ科 センブリ属
        学名 Swertia bimaculata

  • 山地の湿った草地や沢沿いの道などに生えていて、秋に金剛山や岩湧山を訪れると、群生している花を見ることがあります。北海道~九州、中国・ヒマラヤに分布する二年草です。
  • 和名は、5枚の白い花びら(花冠の裂片)にある黒紫色の小さな斑点を夜明けの空の星に見立てたとのことで、そのセンスには脱帽です。
  • 学名の bimaculata は、2つの斑点という意味で、小さな斑点に下にある黄緑色の2つの大きな斑点のことを示します。この大きな斑点は蜜腺で、蜜が盛り上がって見えることがあります。このような場所に蜜腺のある花は珍しく、夜明けの月のように見えます。
  • 同じセンブリ属( Swertia )のセンブリ( S. japonica )は、日当たりのよい草地に多く、里山の田んぼの土手などでもよく見られます。センブリの花の蜜腺は花びらの基部にあり、黄緑色の蜜腺の周りには長い毛が生えています。また、同属のムラサキセンブリ( S.pseudochinensis )は、日当たりのよい草原や岩場で見られる比較的珍しい花です。ムラサキセンブリの花は紫色で美しいですが、蜜腺は長い毛に隠れてはっきりしません。
  • センブリ属の花は秋に咲きます。小さい花ですが、よく見ると味わい深いです。
写真1
アケボノソウ:岩湧山にて
アケボノソウ

写真2
アケボノソウの花(金剛山にて):黄緑の蜜線に注目
アケボノソウの花

写真3 センブリの花(堺市にて):花びらの基部の黄緑が蜜線
センブリの花

写真4 ムラサキセンブリの花(和歌山県生石高原にて)
ムラサキセンブリの花

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。森林インストラクター。