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土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに紹介していきます。 今回は「ミヤマセセリ」を紹介します。

【№6】ミヤマセセリ(深山挵)
       セセリチョウ科 チャマダラセセリ亜科
        学名 Erynnis montanus

  • 国内では、北海道~九州、海外では中国大陸、アムール、朝鮮半島に分布する蝶です。
  • 早春に年1回だけ成虫が出現する蝶の一つで、平地から低山地の雑木林(落葉広葉樹林)で見られます。 大阪では、市街地ではみられませんが、 周辺の里山や山地では、ヤマザクラの咲く頃から1ヶ月ほど、 同時期に同じように年一回現れるコツバメ(Callophrys ferrea:シジミチョウ科)と一緒に見られます。
  • 前翅の表は、オスでは暗褐色ですが、メスでは、中央部に白っぽい帯があるので、識別できます。 後翅には、黄色い斑点がみられます。地味ですがよくみるとシックな蝶です。
  • 食餌植物は、ブナ科のコナラやクヌギです。 早春のみの年1化の蝶のほとんどは、羽化後すぐに産卵し、 孵化した幼虫は、夏までに蛹になって、夏、秋、冬を蛹で越すものが多いのですが、 ミヤマセセリだけは、秋までゆっくりと成長して、 晩秋に幼虫が地上に降りて枯葉を綴ってその中で越冬し、春早くそのまま蛹になって羽化します。
  • ミヤマセセリは、コナラが芽吹き始める頃の里山の2次林を元気いっぱい飛び回り、春の花を見に来た森林インストラクターを歓迎します。

(2012年4月)

写真1:ミヤマセセリ(雌:栃木県 仙人ケ岳 4月)
miyamaseserim.jpg

写真2 ミヤマセセリ(雄:群馬県 笠丸山)
ミヤマセセリ

写真3 コツバメ(大和葛城山 キブシの花で吸蜜4月。主な食餌植物は、 ツツジ科のアセビで、幼虫は、蕾、花、果実、新芽を食べます。蛹で越冬します。)
コツバメ

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、 花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。 森林インストラクター。