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土井さんの「野山の花と蝶を訪ねて」

 私がこれまでに訪ねた野山で出会った花や蝶たちを、思いつくままに紹介していきます。 今回は「カザグルマ」を紹介します。

【№7】カザグルマ(風車)
       キンポウゲ科センニンソウ属
        学名 Clematis patens

  • 国内では、本州(秋田県以南)、四国、九州北部、海外では中国東北部、朝鮮半島に分布するつる性の多年草です。
  • 花は、5月~6月頃に上向きに咲き、直径10cm前後で日本の野草なかではもっとも大きい花です。 花弁の様に見える萼片が8枚あり、色は地域によって変異が大きく白~淡紫色の見事な花です。 一般にクレマチスと呼ばれるセンニンソウ属の園芸品種の品種改良の交配親として古くから使われ、 パテンス系といわれる多くの大輪の品種が生み出されています。私も、20種近くを庭で栽培しています。
  • 写真1のカザグルマは、日光で群生していた白色の野生の花を撮影したものですが、 採取されたり、生育地が開発されたりして野生で見ることは難しくなっています。 環境省のレッドリストの準絶滅危惧種(NT)、大阪府では絶滅危惧Ⅰ類で、 奈良県の宇陀市の自生地は、国指定の天然記念物になっています。
  • 園芸種のクレマチスは、テッセン(鉄線)と呼ばれることがありますが、 テッセンとは、本来センニンソウ属の中国原産のC. florida(中国名:鉄線蓮)のことで、 この原種もクレマチス類の品種改良に利用され、 フロリダ系と呼ばれる多くの八重咲きの園芸品種が生み出されています。
  • センニンソウ属は、日本には約20種が自生しています。 センニンソウ(C. terniflora)やボタンズル(C. apiifolia)は、 白い萼片が4枚十字形に咲き、里山でもおなじみです。 ハンショウズル(半鐘蔓)と呼ばれる鐘型の各種のセンニンソウ属の花は、 山を歩いているとひっそりと咲いているのに出会えます。
  • 大輪の花カザグルマ、今では園芸品種として初夏の庭を楽しませてくれます。

(2012年5月)

写真1:カザグルマ(栃木県 日光 白色)
カザグルマ1

写真2 カザグルマ(植栽:筑波実験植物園 栃木県間々田産 青色)
カザグルマ2

写真3 テッセン(植栽:中国原産)
テッセン

写真4 (センニンソウ:大阪府堺市)
センニンソウ

写真5 (トリガタハンショウズル:Clematis tisaensis:東京都三頭山)
トリガタハンショウズル

撮影と解説者紹介:

土井 雄一(どいゆういち) ・・ FIO会員

土井さんの写真 小学校時代から昆虫採集を始め、蝶を求めて各地の野山を訪ねる中で、 花の美しさにも魅せられて写真撮影に熱中。 森林インストラクター。