佐藤さんのお役立ち気象歳時記
時雨(しぐれ)
時雨の季節がやってきた。時雨とは、晩秋から初冬にかけて積雲系の雲から降る雨、にわか雨のことである。晴れたかと思うと曇り、一陣の風とともにザァーと降るかと思えば穏やかになって日の射す天気が、一日のうちで繰り返し現れる。日本海側でこの季節、「弁当忘れても、傘忘れるな」と言われるゆえんである。さらに時雨を降らせる雲は、日本海側から山を越えて盆地に流れだす。そのような時雨のひとつに京都の「北山しぐれ」がある。雨が風にあおられ北山杉を煙らせて、しぐれがやってくる。
小谷城から薄日さす竹生島を望む |
2007年、羽曳野市民講座「戦国時代への招待」を受講していた私は、戦国時代の城郭の探訪をレポートとして提出することを決め、年の暮も近づいた12月20日、湖北の近江小谷(おだに)城を訪れた。冬型気圧配置のゆるむことを期待して、北陸本線河毛駅に降り立ったが、小谷城への行き帰りは、吹き降りとなった。ところが、小谷城を訪れていた昼前後は、雨が止んで日射しに恵まれ、尾根に連なる遺構、空堀や土塁、野づら積みの石垣を見ることができた。訪れる人のない小谷城は、浅井(あざい)家鎮魂の墓所のようであった。
さて、当日の天気を、天気図と敦賀(福井県)、彦根(滋賀県)の気象データで振り返ってみよう。天気図では、冬型気圧配置は緩んで見えるものの、しぶとく持続していた。日本海側の敦賀では内陸の彦根に比べて雨の降っている時間が長く天気が悪い。小谷城の行帰り雨に会ったが、行きの雨雲は昼前に彦根で雨を降らせ、帰りの雨は昼過ぎ以降の敦賀の雨雲の南下によるものであった。敦賀の11~12時の降雨・日照時間の合計は1時間を超えており、日射しの中で雨が降っていたようだ。
(2011年11月)
執筆者紹介:
佐藤 英雄 (さとう ひでお) ・・ FIO会員、事務局担当のひとり
民間の気象会社に34年間勤務し、気象の観測・調査・設計、解説・予測などに従事。気象予報士でもあり、森林インストラクターの眼からみた「気象」のお役立ち情報を、月1回のペースで、わかりやすく解説します。